小学校の学校公開、国語の授業のことで少し書いてみようと思います。
その時の小学校の道徳の時間は「はしのうえのおおかみ」の話でした。
「はしのうえのおおかみ」の話って?
どんな話なの?
かいつまんで言うと、こんな話です。
「一本の木の橋があります。どうぶつ一匹しか通れない狭い橋です。
ある日、ウサギが橋の真ん中までくると目の前から、オオカミがやってきます。
オオカミは、体の小さいウサギに対して、自分を通すために、橋を戻るようにといじわるをします。
ウサギでうまくいくと、オオカミは、このいじわるに味をしめて、キツネに対しても、タヌキに対しても同じことを繰り返します。
そんなある日のこと、オオカミの目の前に立ちはだかったのは体の大きなクマでした。
体の大きなクマにたじろぐオオカミでしたが、そんなオオカミにクマはこういったのです。
『オオカミくん、こうすればいいのさ』
そういいながら、オオカミの体を持ち上げ、後ろ側にやさしくおろしてあげたのです。
それからというもの、オオカミは、ウサギやキツネやタヌキを『こうすればいいのさ』
と、体を持ち上げて、後ろにやさしくおろしてあげるようになったそうです。
オオカミは、いじわるをしていた時よりもずっといい気持ちになりました。」
悪いオオカミが改心したって話かな?
授業でのポイント
ひとことで言うと、授業のポイントは
「やさしい心を持ちましょう」
だと思います。
やさしい心でいると、みんながうれしいし、自分も気持ちがよいよ!という話だと思います。
そうだね、いい話だよね
でも、自分が気になるのはオオカミの心持ちよりも、クマの扱いのほうが断然気になるのです。
クマ?
これからの時代はクマの「アイデア」が大事なのではないか?という話
物語の主人公はオオカミです。
これは子供が読むお話としては当然の視点で、自分がいたずらや悪いことをしてしまうけれども、人が良いことをすることをみて、それを学んで自分もよいことをしていこう!ということなので、主人公がオオカミであることは当然です。
ですが、この物語の中で、一番、この世界を良い方向に動かしたのは、オオカミではなく「クマ」なんです。
クマがやさしく後ろにおろしてあげることを教えてくれたからね。
そうなんです。クマが出てこないと、オオカミはずっと、いじわるを続けていくことでしょう。
まあ、それじゃあお話にならないもんね
ここでひとつ、こんなことを考えてみてほしいんです。
”一本の木の橋を大きい動物が小さい動物を抱えて後ろに渡してあげるやり方を実行したのは、実はクマがオオカミを抱き上げたことが最初だった”
なぜかといえば、もしその木の橋の渡り方が常識なのだったら、常識に反することをやっているオオカミは、そのことについてウサギやキツネやタヌキから抗議をうけている可能性があります。そうした話が一切出てこないということは、このやり方は、それまでの常識には存在しなかった可能性が高いです。事実、物語の後半では、「こうすればいいんだよ」と、オオカミが新しい渡り方をウサギやキツネやタヌキに教えようとします。
つまり今回のクマの行動は、この動物の世界での「発明」であり「イノベーション」であった可能性があるのです。そして、その発明により、橋の渡り方が効率的で便利になり、なにより世界を少しハッピーな場所に変えたというのが、クマの発明の偉大なところだと思うんです。
なんか話が壮大な感じになってる?
ちょっと大げさかもしれませんが、イノベーションといいながら、なんの技術やテクノロジーも使っていないところも、素晴らしいところです。
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たとえば世界で現実にあったこんな話
ベトナムの農村部で栄養事情がよくない環境をなんとかしなければならない、そんな状況に放り込まれた一人のアメリカ人がいました。
そのアメリカ人はベトナムで生活したことがあるわけでもなく、ベトナムに来るまでに、まったく現地の情報をしっているわけではありませんでした。
彼がまず行ったことは実地調査です。農村部を訪れ、たしかに栄養事情がよくないことを理解しました。お金があれば栄養価の高い食品を手に入れることができるかもしれませんが、そんなことができれば当の昔に行われています。彼自身がそうした援助ができるわけでもないですし、金銭的な援助は一時期の助けにしかならず、長期的な改善をするためには有効ではありません。
調査を続ける中、彼は、農村部のある栄養環境が良い家庭を発見します。その家庭は決して裕福なわけではなかったです。ですが、その家庭では、家の近くに生えている食べられる植物を家族で食べていたということが分かったのです。
そこで、彼はその植物を使った料理を農村部に広める活動をはじめました。そこら中に生えている植物ですし、お金がかかるものでもありません。そうした活動が徐々に実を結び、栄養環境は次第に改善をしていったとのことでした。
へぇ~
これからの時代に必要なのは、こうしたアイデア力と実行力なんじゃないかな?と思うんです。
小学校高学年にもう一度「クマ」の視点で読んでほしい
この道徳の授業は小学校低学年用の話なので、お兄さんや大人がよいことをやっていることを見習って、良いことをしていこうね!ということで、授業の内容は素晴らしいと思います。
ですが、これからの時代、見習うべき正解がいつもいつも明らかになっているということではない時代だと思います。
大きくなるにつれて、オオカミの立場ではなく、クマの立場になっていくわけです。
自分がクマになったときに、アイデアがなければ…謙虚さをみせてオオカミに道を譲るか、オオカミを諭し道を譲らせるのか…そんないわゆる大人の対応しか選択肢がないと思います。
ですが、このクマのように「世界をよりよくするアイデアを提示する」ことができる大人になってもらいたい、なんてことを思った学校参観でした。
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